「この電車、○○線に直通します」――駅のアナウンスでよく耳にする言葉ですが、「直通」が具体的に何を意味するのか、きちんと説明できる方は意外と少ないのではないでしょうか。
直通とは、異なる路線や鉄道会社の線路をまたいで、乗り換えなしで電車が走り続けること。東京メトロ副都心線に乗ったら、いつの間にか東急東横線になって横浜に着いていた――これが直通運転の正体です。
便利な反面、「行き先を間違えた」「知らない路線に連れて行かれた」というトラブルも直通ならでは。この記事では、電車の直通の仕組みから、主要な直通路線、運賃の計算方法、よくある失敗パターンまで、知っているようで知らない「直通」のすべてを解説します。
💡 この記事でわかること
・電車の「直通」と「相互直通運転」の違いと仕組み
・東京・大阪・名古屋の主要な直通路線一覧
・直通運転の運賃はどう計算されるのか
・直通で「乗り過ごした」「行き先が違った」を防ぐ方法
電車の直通とは?|乗り換えなしで別の路線を走る仕組み

「直通」の意味は「線路をまたいで走り続ける」こと
電車の「直通」とは、ある路線の電車がそのまま別の路線の線路に入り、乗り換えなしで運行を続けることを指します。たとえば、東京メトロ半蔵門線の電車が渋谷駅から先は東急田園都市線の線路を走って中央林間駅まで行く。このように、路線の境界を超えて1本の電車が走り続ける運行形態が「直通運転」です。
直通運転が行われている区間では、乗客は境界の駅で降りる必要がありません。ホームに止まって乗務員が交代することはありますが、乗客はそのまま座っていれば目的地まで運ばれていきます。これが直通最大のメリットであり、通勤・通学の時間短縮に大きく貢献しています。
ただし、「直通」と一口に言っても、すべての電車が直通するわけではありません。同じ路線でも「直通あり」と「当駅止まり」の電車が混在しており、行き先表示や車内アナウンスで確認する必要があります。ここを見落とすと「乗り換えなしで行けるはずだったのに、途中で降ろされた」という事態になります。
直通運転と相互直通運転の違い|片方向と双方向
直通運転には大きく分けて「片乗り入れ」と「相互直通運転(相互乗り入れ)」の2種類があります。
片乗り入れは、A社の電車がB社の路線に入るだけで、B社の電車はA社の路線には入らないパターン。たとえば、JR常磐線の電車が東京メトロ千代田線に乗り入れるケースがこれにあたります(JRの車両が地下鉄を走るが、東京メトロの車両はJR線に入らない場合)。
一方、相互直通運転はA社の電車もB社の路線を走り、B社の電車もA社の路線を走る双方向の乗り入れです。東京メトロ東西線とJR中央・総武線、東京メトロ副都心線と東急東横線など、東京の地下鉄と郊外路線の多くがこの形態を取っています。
利用者にとっては、どちらの形態でも「乗り換えなしで行ける」ことに変わりありません。違いが出るのは運行ダイヤの柔軟性や、遅延時の影響範囲です。相互直通運転は路線同士の結びつきが強い分、一方の路線で事故が起きると、もう一方の路線にも遅延が波及しやすいというデメリットがあります。
なぜ直通運転が始まったのか|60年前から続く混雑解消の知恵
日本で本格的な相互直通運転が始まったのは1960年。都営地下鉄1号線(現在の都営浅草線)と京成押上線の間で行われたのが最初です。当時の東京は急速な人口増加で通勤ラッシュが社会問題化しており、ターミナル駅での乗り換え混雑を解消するために、地下鉄と郊外路線を直通させるアイデアが生まれました。
この「都心の地下鉄と郊外の私鉄をつなぐ」という発想は世界的にも珍しく、日本地下鉄協会は「世界でも例がない」と評しています。ロンドンやパリの地下鉄は郊外路線との直通がほとんどなく、乗客はターミナル駅で乗り換えるのが基本。東京の鉄道が「乗り換えなしで郊外から都心を突き抜けられる」のは、この直通運転のおかげです。
その後、東京の地下鉄はほぼすべての路線が郊外路線との直通を実現。都営大江戸線を除く全路線で相互直通運転が行われており、2023年には東急新横浜線・相鉄新横浜線の開業により、東急・相鉄・東京メトロ・東武・西武・都営地下鉄の6社にまたがる直通ネットワークが完成しました。
東京の地下鉄と私鉄の直通運転は、実は「国策」として進められたものです。1956年の都市交通審議会答申で「地下鉄は郊外鉄道と相互直通運転を行うべし」と方針が示され、以後の地下鉄建設はすべてこの前提で設計されました。線路の幅(軌間)や電気の方式を乗り入れ先と合わせる必要があるため、路線の計画段階から調整が行われていたのです。
電車の直通で何が変わる?|知っておきたいメリットとデメリット
最大のメリットは「乗り換えゼロ」|通勤時間が10〜20分短縮
直通運転の最大の恩恵は、言うまでもなく乗り換えが不要になることです。乗り換え1回にかかる時間は、ホームの移動・待ち時間を含めて平均5〜10分。直通運転によって乗り換えが1〜2回減れば、通勤時間が10〜20分短くなる計算です。
たとえば、神奈川県の湘南台駅から東京都の渋谷駅へ通勤する場合。相鉄・東急直通線の開業前は、相鉄線で横浜へ出てJRまたは東急に乗り換える必要がありました。現在は相鉄線から東急線への直通電車に乗れば、乗り換えなしで渋谷まで到着できます。所要時間の短縮は約15分、さらに「座ったまま着ける」という快適さの差も大きいです。
荷物が多い時、ベビーカーを押している時、足を怪我している時――乗り換えの階段やエスカレーターが不要になる直通の恩恵は、健常者が思っている以上に大きなものです。
デメリットは「遅延の連鎖」|1路線の事故が3社に波及
直通運転の最大のデメリットは、遅延が広範囲に波及することです。たとえば東武東上線で人身事故が発生すると、直通先の東京メトロ副都心線が遅れ、さらにその先の東急東横線・みなとみらい線にも影響が出ます。1社の事故が3〜4社に波及するのは、直通運転の宿命です。
2023年の相鉄・東急直通線の開業後は、相鉄・東急・東京メトロ・東武・西武・都営地下鉄の6社がつながったため、影響範囲はさらに拡大しました。朝のラッシュ時に1箇所で遅延が発生すると、神奈川県から埼玉県まで玉突き式に遅れが広がる可能性があります。
鉄道各社もこの問題は認識しており、遅延が一定以上になると直通運転を打ち切り、境界駅で折り返し運転に切り替える対策を取っています。通勤で直通路線を利用する方は、遅延時のう回ルートを1つ頭に入れておくと安心です。
行き先がバラバラで混乱する?|直通ならではの「迷子」問題
直通運転が行われている路線では、同じホームに「行き先がまったく違う電車」が次々とやってきます。たとえば東京メトロ副都心線の渋谷駅では、「元町・中華街行き」「飯能行き」「森林公園行き」「小手指行き」「新木場行き」と、横浜方面・埼玉方面・千葉方面の電車が入り乱れます。
慣れている人にとっては行き先表示を見るだけですが、初めてその路線を使う人や観光客にとっては「どれに乗ればいいのか分からない」という混乱の原因になります。特に外国人観光客からは「Same platform, different direction, very confusing(同じホームなのに行き先が違って混乱する)」という声が多いとされています。
対策はシンプル。ホーム上の電光掲示板で「行き先」と「種別(急行・各停など)」を必ず確認する習慣をつけましょう。スマートフォンの乗換案内アプリで「○時○分発の△△行きに乗車」と具体的に表示されるので、それに従えば間違えることはありません。
⚠️ よくある失敗パターン
「副都心線で渋谷に行くつもりが、東急東横線に直通してそのまま横浜方面に連れて行かれた」というケース。直通電車は境界駅(渋谷)を通過するものもあるため、降りるべき駅を通過してしまうことがあります。乗車前に行き先表示を確認し、自分の降車駅が停車駅に含まれているかをチェックしましょう。
電車の直通はどこで体験できる?|東京・大阪・名古屋の主要直通路線

東京の直通路線|日本一複雑な直通ネットワーク
東京は世界で最も直通運転が発達した都市です。都営大江戸線を除く地下鉄全路線が郊外路線と直通しており、その組み合わせは以下の通りです。
| 地下鉄路線 | 直通先(北・西側) | 直通先(南・東側) |
|---|---|---|
| 東京メトロ副都心線 | 東武東上線・西武有楽町線 | 東急東横線・みなとみらい線 |
| 東京メトロ半蔵門線 | 東武スカイツリーライン | 東急田園都市線 |
| 東京メトロ千代田線 | JR常磐線 | 小田急小田原線 |
| 都営浅草線 | 京成線・北総線 | 京急線 |
| 都営三田線 | 東急目黒線・相鉄線 | — |
特に注目すべきは都営浅草線の直通ネットワーク。京成線→都営浅草線→京急線と直通することで、成田空港から羽田空港まで乗り換えなしでつながっています。「アクセス特急」や「エアポート快特」がこの直通ルートを走り、空港間の移動を1本の電車で実現しています。
大阪の直通路線|御堂筋線と相互直通の歴史
大阪でも直通運転は活発に行われています。Osaka Metro(旧大阪市営地下鉄)の堺筋線は阪急千里線・京都線と相互直通運転を実施。天下茶屋駅から乗れば、地下鉄を経由して阪急の北千里や高槻市まで直通で行けます。
Osaka Metro御堂筋線は北大阪急行と直通しており、千里中央(2024年延伸で箕面萱野)まで1本で到着できます。御堂筋線の梅田駅や難波駅から北大阪急行の電車に乗り換えなしで乗れるのは、大阪北部に住む通勤客にとって大きなメリットです。
近鉄けいはんな線と Osaka Metro中央線の直通も見逃せません。大阪港のコスモスクエアから奈良県の学研奈良登美ヶ丘まで、大阪と奈良を地下鉄経由で1本で結んでいます。
名古屋の直通路線|地下鉄鶴舞線と名鉄・リニモ
名古屋では、名古屋市営地下鉄鶴舞線と名鉄豊田線・犬山線が相互直通運転を行っています。赤池駅から地下鉄鶴舞線に入り、上小田井駅から名鉄犬山線に出る、という東西を貫く直通ルートです。豊田市方面から名古屋の都心を通り抜けて犬山方面まで1本で行ける、名古屋版の直通ネットワークです。
同じく名古屋市営地下鉄上飯田線と名鉄小牧線も直通しており、上飯田駅を境界として乗り入れが行われています。こちらは路線が短く、地元住民以外にはあまり知られていませんが、小牧方面への通勤に重宝されています。
愛知高速交通のリニモ(東部丘陵線)は直通運転こそ行っていませんが、地下鉄東山線の藤が丘駅で乗り換えられるため、実質的に都心からの連続性が確保されています。直通ではないものの、改札を出ずに乗り換えられる設計は、直通と同様の利便性を提供しています。
直通運転を行うには、線路の幅(軌間)が同じでなければなりません。東京メトロは1,067mm(狭軌)と1,435mm(標準軌)の2種類の軌間を持ち、路線ごとに直通先の私鉄に合わせています。銀座線と丸ノ内線だけは第三軌条方式(レールから給電)のため他社との直通が行われず、独立した路線として運行されています。
電車の直通で運賃はどうなる?|知らないと損する料金の仕組み
直通しても運賃は別計算|会社が変わると初乗りが加算される
直通運転で乗り換えなしに行けるからといって、運賃が通しで計算されるわけではありません。鉄道会社が変わる境界駅で運賃は区切られ、それぞれの会社の運賃が合算されます。
たとえば、東急東横線の横浜駅から東京メトロ副都心線の池袋駅まで直通で行く場合、東急の運賃(横浜→渋谷:280円)と東京メトロの運賃(渋谷→池袋:210円)の合計490円がかかります。もしこれが1つの鉄道会社の路線だったら、同じ距離で300円程度で済むかもしれません。
「乗り換えなしなのに、なぜ運賃が高くなるの?」という不満は直通路線の利用者から多く聞かれます。これは各鉄道会社が独立採算で運営されているため、会社の境界をまたぐたびに初乗り運賃が加算される仕組みになっているからです。
ICカードなら自動計算|紙のきっぷは注意が必要
SuicaやPASMOなどのICカードを使えば、直通路線の運賃は改札を通るだけで自動的に正しく計算されます。どの会社の区間をどれだけ乗ったかをシステムが判別し、最適な運賃を引き落としてくれるため、利用者が計算する必要はありません。
一方、紙のきっぷは少し面倒です。直通運転の区間を通しで乗る場合、出発駅で目的地までの通しのきっぷを買う必要があります。自動券売機で買える場合が多いですが、路線の組み合わせによっては窓口でしか購入できないケースもあります。
迷ったらICカードを使うのが最も簡単です。ただし、ICカードの残高が不足していると改札で止められるので、直通で長距離を乗る場合は事前にチャージしておきましょう。東京メトロから東武東上線の奥地まで直通すると、片道で700〜800円になることも珍しくありません。
直通利用で使えるお得なきっぷ|知らないと損する割引制度
直通運転の「運賃が割高になる」問題を緩和するため、鉄道各社は連絡定期券や割引きっぷを用意しています。
通勤・通学で直通路線を使うなら、連絡定期券が必須です。2社以上にまたがる区間の定期券を1枚で購入でき、ICカードに載せられます。各社ごとに定期券を買うより手続きが楽で、割引率も個別に購入するのと同じかそれ以上です。
東京メトロと都営地下鉄をまたぐ場合は「メトロ・都営乗り継ぎ割引」があり、ICカード利用で70円が自動的に割引されます。意識していなくても適用されるため、知らないうちに恩恵を受けている方も多いでしょう。
観光客向けには「東京フリーきっぷ」(1,600円で都内のJR・地下鉄・都電・都バス乗り放題)や「東京メトロ24時間券」(600円)などのフリーパスがあります。直通路線を何度も乗り降りするなら、こうしたフリーパスのほうが個別運賃より安くなるケースが多いです。
⭐ 運賃のポイント
・直通しても運賃は会社ごとに別計算。乗り換えなし≠安いとは限らない
・ICカードなら自動で最適運賃を計算。紙きっぷより確実
・通勤なら連絡定期券、観光ならフリーパスで「直通の運賃高い問題」を解消
電車の直通を支える技術|異なる会社の電車が走れる理由

線路の幅・電気方式・信号システムを統一する|直通の大前提
異なる鉄道会社の電車が互いの路線を走るには、線路の幅(軌間)、電気方式(架線の電圧)、信号システムの3つが一致している必要があります。1つでも違えば物理的に直通できません。
軌間は大きく分けて1,067mm(狭軌・JR在来線や多くの私鉄)と1,435mm(標準軌・京急・京成・阪急など)の2種類。東京メトロは路線ごとに軌間が異なり、直通先の私鉄に合わせた設計になっています。半蔵門線は1,067mmで東急田園都市線と直通、銀座線は1,435mmですが第三軌条方式のため直通なし、というように路線ごとに事情が違います。
電気方式も重要です。JR在来線は多くが交流20,000Vまたは直流1,500Vですが、地下鉄は直流1,500Vが標準。つくばエクスプレスのように途中で交流と直流が切り替わる路線では、両方に対応した「交直両用車両」が使われています。
信号システムは近年の直通で最もハードルが高い要素です。各社独自のATC(自動列車制御装置)やATS(自動列車停止装置)を搭載する必要があり、直通用の車両には複数の信号システムが詰め込まれています。
車両の規格統一|ドアの数・位置・車両の大きさまで合わせる
直通運転用の車両は、乗り入れ先の路線のホームドアの位置、トンネルの大きさ(車両限界)、ドアの数と位置がすべて一致している必要があります。ホームドアが4ドア車に合わせて設置されている路線に3ドアの車両は乗り入れできません。
このため、直通運転に使う車両は設計段階から「どの路線に乗り入れるか」を前提に作られます。東急5050系は東京メトロ副都心線・東武東上線・西武池袋線すべてに対応した設計で、4社の路線を自在に走り回ることができます。1編成の開発費は通常より高くなりますが、乗客の利便性と引き換えに各社が投資を行っています。
車両の冷房能力や加速性能も、乗り入れ先の路線に合わせて調整されます。地下区間の多い地下鉄路線と、地上を走る郊外路線では求められる性能が異なるため、1つの車両に複数の性能要件を満たすことが求められる。直通車両は鉄道技術の粋を集めた存在なのです。
乗務員の交代はどこで行われる?|会社の境界駅の舞台裏
直通運転では、鉄道会社の境界駅で乗務員(運転士・車掌)が交代するのが基本です。これは各社の路線を熟知した乗務員が運転を担当するためで、安全運行の要となる仕組みです。
交代にかかる時間は通常30秒〜1分程度。ホームに停車している間に運転台で引き継ぎが行われるため、乗客にはほとんど気づかれません。ただし、一部の路線では境界駅を通過する列車もあり、その場合は乗り入れ先の路線まで同じ乗務員が担当します。このような運転士は「他社線の運転資格」を別途取得しています。
車掌については、最近は「ワンマン運転」(車掌なし・運転士のみ)が増えているため、交代が不要なケースも増えてきました。技術の進歩により、直通運転のオペレーションはますますシームレスになっています。
⚠️ よくある失敗パターン
「直通先の路線で遅延が発生し、いつもの電車が境界駅止まりになっていた」というケース。直通運転は遅延が一定以上になると打ち切られ、境界駅での折り返し運転に切り替わります。通勤で直通路線を使うなら、遅延時のう回ルート(別路線やバス)を1つ把握しておくのが鉄則です。
電車の直通で迷わないために|初心者が覚えておくべきポイント
行き先表示の読み方|「○○線直通」と「○○行き」の違い
直通路線のホームでは、電車の行き先表示にさまざまな駅名が表示されます。「元町・中華街行き」「小手指行き」「清瀬行き」「森林公園行き」――これらすべてが同じホームから発車するため、初めて使う人は混乱しがちです。
覚えておくべきは「行き先=その電車が最終的に到着する駅」ということ。「元町・中華街行き」は横浜方面、「森林公園行き」は埼玉方面。方角が真逆です。行き先の駅名を覚えなくても、方面(「○○方面」)を確認すれば間違えることはありません。
駅の電光掲示板には「東急線直通」「東武線直通」といった表示が出ることもあります。これは「この電車は直通してその路線まで行きますよ」というサイン。自分の目的地がその直通先にあるかどうかを判断する手がかりになります。
乗換案内アプリを活用する|直通電車をピンポイントで探す方法
Yahoo!乗換案内、Google Maps、NAVITIMEなどの乗換案内アプリは、直通電車を自動的に候補に含めてくれます。「乗り換え0回」の検索結果が表示されたら、それは直通電車を使うルートです。
アプリの便利な使い方として、出発地と目的地を入力した後に「乗り換え回数:少ない順」でソートする方法があります。直通で行ける場合は「乗り換え0回」が上位に表示されるため、直通ルートの有無を一発で確認できます。
また、アプリには「何分発のどの行き先に乗るか」が具体的に表示されるため、ホームで迷う心配もありません。直通路線に慣れていないうちは、アプリの指示に従って乗車するのが最も確実な方法です。路線図を頭に入れるのは、何度か乗ってからで十分です。
直通が打ち切られた時の対処法|振替輸送と代替ルート
直通運転が遅延や事故で打ち切られた場合、境界駅で「この先の○○線は運転を見合わせています」というアナウンスが流れます。このとき慌てないために、知っておくべきことが3つあります。
まず「振替輸送」。直通先の路線が運転見合わせになった場合、他の鉄道会社の路線で振替輸送が行われます。きっぷや定期券を持っていれば、振替輸送の対象路線に追加料金なしで乗車できます。ICカードの場合は振替輸送の対象にならないケースがあるため、駅員に確認しましょう。
次に「折り返し乗車」。直通が打ち切られた境界駅から、元の路線の電車で引き返すことができます。たとえば東急線から東京メトロに直通できなくなった場合、渋谷駅から東急線の電車で引き返し、JR山手線に乗り換えて目的地を目指す、という選択肢です。
最後に「タクシーやバスの代替」。境界駅の周辺にはバス路線が充実していることが多いため、電車が動かない場合はバスで迂回する方法も有効です。渋谷・新宿・池袋などの大きな境界駅なら、複数のバス路線が利用可能です。
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電車の直通の歴史と未来|これからどうなる?
1960年から60年超|日本の直通運転はなぜ発展したのか
日本の直通運転が世界でも類を見ないほど発達した理由は、東京の鉄道構造にあります。東京の鉄道は「私鉄が郊外からターミナル駅(渋谷・新宿・池袋・上野など)まで乗客を運び、そこから先は地下鉄に乗り換えて都心に入る」という構造でした。
この構造では、ターミナル駅に乗客が集中して深刻な混雑が発生します。朝のラッシュ時の渋谷駅や池袋駅は、乗り換え客でホームが溢れかえる状態でした。直通運転は、この「ターミナル駅の混雑」を根本から解消する手段として推進されたのです。
結果として、東京の地下鉄13路線のうち11路線(銀座線と大江戸線を除く)が郊外路線と直通し、埼玉・千葉・神奈川から都心を貫通する巨大な鉄道ネットワークが完成しました。これは交通計画としては大成功であり、毎日数百万人の通勤を支えるインフラとなっています。
2023年の相鉄・東急直通線が変えた勢力図
直通運転の歴史で最も新しい大きな動きが、2023年3月に開業した相鉄・東急直通線です。これにより、それまで「神奈川県内完結」だった相鉄線が、東急・東京メトロ・東武・西武・都営地下鉄とつながり、6社にまたがる巨大直通ネットワークが誕生しました。
相鉄沿線(海老名・湘南台など)から渋谷・新宿三丁目・池袋方面へ乗り換えなしで行けるようになったインパクトは大きく、沿線の不動産価格が上昇するほどの効果がありました。「直通1本で都心に出られるかどうか」が、住む場所を選ぶ基準にまでなっている好例です。
一方で、6社直通により遅延の波及範囲が広がったことは先述の通り。便利さとリスクは表裏一体であり、鉄道各社は遅延時のダイヤ回復手順の高度化に取り組んでいます。
今後の直通拡大計画|有楽町線延伸・南北線延伸
東京メトロでは、有楽町線の住吉延伸(豊洲→住吉)と南北線の品川延伸(白金高輪→品川)が計画されています。いずれも2030年代の開業を目指しており、実現すれば直通ネットワークはさらに拡大します。
有楽町線が住吉まで延伸されると、半蔵門線との接続が強化され、東武スカイツリーライン方面から東京湾岸エリア(豊洲・有明など)へのアクセスが改善されます。南北線の品川延伸は、JR品川駅でのリニア中央新幹線(2027年以降開業予定)との接続を見据えたもので、リニアの恩恵を東急・相鉄沿線にまで波及させる効果が期待されています。
直通運転のネットワークは、まだ完成形ではありません。新しい路線が開通するたびに、直通の選択肢は増え、電車1本で行ける範囲が広がっていきます。「直通」という仕組みは、これからも日本の鉄道の利便性を支え続けるでしょう。
相鉄・東急直通線の開業により、理論上は「海老名(神奈川県)→東京メトロ副都心線→東武東上線→森林公園(埼玉県)」のように、神奈川から埼玉まで乗り換えなしで行ける電車が走るようになりました。その距離は100km超。直通がつくりだす「乗り換えなし圏」は、もはや県をまたぐ規模になっています。
まとめ|電車の直通とは「乗り換えの壁を消す」便利な仕組み
電車の「直通」とは、異なる路線や鉄道会社をまたいで、乗り換えなしで電車が走り続ける運行形態のことです。1960年に東京で始まったこの仕組みは60年以上の歴史を重ね、2026年現在、東京の地下鉄のほぼすべての路線が郊外路線と直通するまでに発展しました。
乗り換えなしで移動できる便利さの裏には、遅延の波及リスクや行き先の複雑さといったデメリットもあります。しかし、乗換案内アプリを活用し、行き先表示を確認する習慣をつければ、直通路線を使いこなすのは難しくありません。運賃が会社ごとの別計算になる点は、連絡定期券やフリーパスで賢くカバーしましょう。
📝 この記事のポイントまとめ
- 直通とは、異なる路線・会社の線路をまたいで乗り換えなしで走ること
- 東京の地下鉄は大江戸線を除く全路線が郊外路線と直通済み
- 直通のメリットは乗り換え不要(10〜20分短縮)、デメリットは遅延の波及
- 運賃は会社ごとに別計算。ICカードなら自動で正しく精算される
- 行き先表示と方面を確認すれば、初心者でも迷わず乗れる
- 遅延で直通が打ち切られることがある。う回ルートを1つ知っておくと安心
- 2023年の相鉄・東急直通で6社直通ネットワークが完成。今後もさらに拡大予定
まずは普段使っている路線が、どこまで直通しているかを乗換案内アプリで調べてみてください。「いつも乗り換えていたあの駅、実は直通で通過できたの?」という発見があるかもしれません。乗り換えの壁が消えたとき、あなたの移動範囲は一気に広がります。

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